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機械とロマンが交差する瞬間:それが「ブレゲ」である

2025年、ブレゲは創業250周年という大きな節目を迎えています。
1775年にアブラハム=ルイ・ブレゲがパリで創業して以来、このブランドは時計史のほぼ全ての偉大な発明(トゥールビヨン、ブレゲ針、ムーンフェイズなど)に関わってきました。
一般的には「時計界のシェイクスピア」と呼ばれるように、ブレゲは「機械工学の科学者」であると同時に、「時計を詩に変える浪漫家」でもあります。
その中でも、「那不勒斯王后(レーヌ・ド・ナポル)」シリーズは、ブレゲのロマンスの頂点に位置する存在です。
世界初の「腕時計」は、王妃からの注文だった
このシリーズの物語は、19世紀初頭にさかのぼります。
当時、時計は紳士たちがポケットに入れる「懐中時計」が主流でした。しかし、ナポレオンの妹であるカロリーヌ・ミュラ(那不勒ス王妃)は、ブレゲに一つの革新的な注文をしました。
「腕に着けられる、楕円形の時計が欲しい。」
1810年。ブレゲはこの依頼に応えるため、世界初の腕時計(Ref. 2639)の製作を開始しました。
その完成までにかかった時間は2年半。極めて薄いこの時計は、三問報時(トリプル・レプリート)機能を備え、ヘアライン(髪の毛と金糸)で編まれたベルトが付いていました。
この「王妃のための一枚」が、今を彩る「那不勒ス王后」シリーズの原点です。
Ref. 8918BB:250年の歴史を纏う「最高傑作」
今回ご紹介するRef. 8918BBは、その歴史的な血統を現代に蘇らせた、まさに「女王のための時計」です。
1. 視覚的中毒性:「黒色大明火エナメル」
この時計を一目見て惹きつけられるのは、その文字盤の深淵さです。
ブレゲは、このモデルに「黒色大明火エナメル(Grand Feu)」を採用しています。
工法: エナメル粉末を800℃以上の高温で何度も焼き締める超絶技術。
完成度: 表面は鏡のように滑らかでありながら、その奥に無限の黒を湛えています。
アクセント: この深黒の文字盤に浮かび上がる銀色のブレゲ数字(Arabic Numerals)。そして、6時位置には梨形(ペアシェイプ)のダイヤモンドが配置され、まるで夜空に瞬く星のよう。
さらに、文字盤の縁取りには117個のダイヤモンド(約0.99カラット)が留められ、光を受けるたびに虹色の輝きを放ちます。
2. デザインの神髄:「偏心文字盤」
那不勒ス王后シリーズの特徴である「卵形(Oval)」ケース(36.5 × 28.45mm)。
18Kホワイトゴールドで鍛えられたケースは、厚さ10.1mmの極上のボリューム感。側面にはブレゲお得意の「コインエッジ(金貨彫り)」が施され、手首を動かす度にきらめきを奏でます。
4時位置に配置されたダイヤモンド付きのリューズは、装着時のシルエットを崩しません。
3. 内面の美:Cal. 537/3 自動巻き機芯
裏蓋はサファイアクリスタルで、内部のCal. 537/3機芯を公開しています。
技術: シリコン製のフラットスプリング(遊丝)を採用。磁気に強く、長期間にわたり精度を保ちます。
装飾: 191個の部品で構成された機芯は、ジュネーヴ波紋(Côtes de Genève)や魚鱗紋(Fish-scale pattern)で手作業で装飾されています。
パワーリザーブ: 約45時間。
女流時計師の間では「男のためのブレゲはマリーン(Marine)、女のためのブレゲは那不勒ス(Reine de Naples)」と言われるほど、このCal. 537/3は小型ながらも手の込んだ造りです。
製品仕様:Ref. 8918BB
項目 仕様
モデル名 那不勒斯王后(Reine de Naples)
リファレンス 8918BB
ケース材質 18K ホワイトゴールド
サイズ 36.5 × 28.45 mm (厚さ 10.1 mm)
文字盤 黒色大明火エナメル、ダイヤモンド117石
ムーブメント Cal. 537/3 自動巻き
動力貯蔵 45時間
防水 30m
ストラップ 黒色サテン織物(トリプルフォールディングバックル)
なぜ、この時計は「最強の女表」なのか?
ブレゲの「那不勒ス王后」が他のハイジュエリーウォッチと一線を画すのは、「歴史の重み」です。
単に宝石を散りばめた豪華な時計ではなく、「世界初の腕時計」という原点をDNAとして持っています。
この時計を手首に着けた瞬間、あなたは1810年の那不勒ス王妃と、250年に及ぶブレゲの歴史と、時計という機械が「腕」に移り変わるという、一大革命の物語を纏っていることになるのです。