小宇宙を感じさせる機構「ムーンフェイズ」
ムーンフェイズは文字盤上で小宇宙を感じさせる、ロマンティックな機構だ。仕組みや歴史を解説し、IWCが開発した永久ムーンフェイズの魅力にも迫る。
ムーンフェイズの仕組み
ムーンフェイズとは、その日の月相(月の満ち欠け具合)を文字盤上に示す機能のことだ。多くのブランドがさまざまなデザインのムーンフェイズを、自社のモデルに取り入れている。
IWC スーパーコピー月が満ちて欠けるまでの平均的な周期は、約29.5日だ。この周期の2倍にあたる「59」の歯数を持つ回転ディスクをムーンフェイズに組み込み、ディスクが半周する間にすべての満ち欠けを見せる仕組みとなっている。
ほとんどのムーンフェイズに共通するのは、月や夜空が描かれたディスクを小窓からのぞかせるデザインである。1周で月の周期を2回見せる仕組みになっているため、ディスクにはふたつの月が描かれている。
ムーンフェイズの歴史と実用性
ムーンフェイズの基本的な機構は、16世紀ごろにはすでに作られていたといわれているが、腕時計に取り入れられ始めたのは1940年代に入ってからだ。
今でこそユニークな見た目が特徴となっているが、ムーンフェイズはもともと実用性を求めて作られた機構である。かつての人々は夜空を眺め、月が地球に及ぼすさまざまな影響を予測していたのだ。
ウェブで月の情報がたやすく入手できる現代と異なり、昔は何日も曇りの日が続くと月相が分からなくなっていただろう。月が隠れている日でも満ち欠けを把握できるムーンフェイズは、月相を必要とする人たちに重宝されていたのである。
IWCが作り上げた「永久ムーンフェイズ」
「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー」
1985年に発表された傑作「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー」。誤差122年に1日という精密な月例表示を実現するのみならず、リュウズひとつでの簡単な操作を可能にした。
一般的な構造のムーンフェイズは、約3年で1日程度の誤差が生じる。歯数59の回転ディスクを使った場合、月の満ち欠けの周期と微妙にずれるためだ。
IWCはこの誤差を小さくすべく、歯数135の回転ディスクをムーンフェイズに組み込んで細かく動かすように改良した。約122年で1日の誤差まで抑えた「永久ムーンフェイズ」を、1985年に発表したのである。
永久ムーンフェイズが搭載されたモデルなら、最初の設定後は生涯にわたって調整する必要がないだろう。その後、2017年に発表された永久ムーンフェイズ搭載モデルでは、表示誤差が約577.5年に1日まで進化している。
ムーンフェイズの合わせ方
月の周期が変動したり時計が止まったりした場合は、ムーンフェイズを手作業で調節しなければならない。リュウズとプッシュボタン、それぞれを使った合わせ方を覚えておこう。
月齢カレンダーを参考にリュウズを回す
ムーンフェイズをリュウズで調節するタイプの時計なら、リュウズを回せば月齢の調節が可能だ。リュウズは時刻や日付の調節にも使用するため、実際の合わせ方は時計の説明書で確認しよう。
ムーンフェイズを合わせる際は、月齢カレンダーを参考にして調節するのが一般的である。ムーンフェイズを新月である「月齢0」の状態にし、直近の新月から経過している日数分をリュウズで進めれば設定は完了だ。
「月齢15」の満月を基準にしても調節できる。月齢カレンダーはインターネットで検索すれば簡単に見つけられるだろう。
プッシュボタンを押して調整する
時計によっては、リュウズではなくプッシュボタンでムーンフェイズを調節するタイプも存在する。
ここでいうプッシュボタンとは、ピンで押して操作する小さなボタンのこと。一般的には、ケースサイドのリュウズの上部付近に配されている。
月齢カレンダーを参考にしながら調節する方法は、リュウズを使う場合と変わらない。新月または満月の状態にし、プッシュボタンを押して現在の月齢まで進めよう。1回押すごとに1日進む仕組みである。
IWCのムーンフェイズ搭載機を紹介
IWCでムーンフェイズが搭載された時計にも、複数のモデルがある。それぞれに違った魅力を知り、好みの1本を見つけてみよう。3つのモデルを厳選して紹介する。
ポートフィノ・オートマティック・ムーンフェイズ
IWC ポートフィノ・オートマチック・ムーンフェイズ
IWC「ポートフィノ・オートマティック・ムーンフェイズ」Ref.IW459401
自動巻き(Cal.35800)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。3気圧防水。107万2500円(税込み)。
ポートフィノはIWCを代表するコレクションのひとつで、洗練されたクラシカルなデザインを特徴としている。搭載されるムーブメントは自動巻きのCal.35800だ。
なお、それまで直径45mmと37mmしかなかったムーンフェイズモデルに、直径40mmのケースを初めて採用したシリーズが「ポートフィノ・オートマティック・ムーンフェイズ」である。
そのひとつであるRef.IW459401は、シルバーの文字盤にゴールドメッキの針とアプライドインデックスを配したモデルだ。ブラウンストラップが柔らかな印象を与える。
なお、より小径サイズがお好みのユーザーには、直径37mmケースを持つ「ポートフィノ・オートマティック・ムーンフェイズ 37」もお勧めだ。
ポートフィノ・ハンドワインド・ムーンフェイズ
ポートフィノ・ハンドワインド・ムーンフェイズ
IWC「ポートフィノ・ハンドワインド・ムーンフェイズ」Ref.IW516401
手巻き(Cal.59800)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約192時間。SSケース(直径45mm、厚さ13.1mm)。3気圧防水。202万4000円(税込み)。
「ポートフィノ・ハンドワインド・ムーンフェイズ」は、クラシカルかつ上品な魅力を備えた初代ポートフィノにオマージュを捧げるシリーズである。
ブルーの夜空と金色の月や星を描いたムーンフェイズが搭載されている。133年に1日の誤差しか生じない、半永久的な機構だ。
ポートフィノにムーンフェイズを取り入れるため、ムーブメントはIWCで開発されたCal.59800が採用されている。完全に巻き上げれば約192時間動作し続ける、心強いパワーリザーブを誇るモデルだ。
ビッグ・パイロット・ウォッチ・パーペチュアル・カレンダー
IWC ビッグ・パイロット・ウォッチ IW503605
IWC「ビッグ・パイロット・ウォッチ・パーペチュアル・カレンダー」Ref.IW503605
自動巻き(Cal.52616)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約168時間。SSケース(直径46.2mm、厚さ15.4mm)。60m防水。496万6500円(税込み)。
「ビッグ・パイロット・ウォッチ」にパーペチュアルカレンダーを搭載したコンプリケーションウォッチが本作だ。ツール感のあるパイロットウォッチに深みのあるブルーが組み合わさることで、エレガントな印象が強まっている。
本作も12時位置にムーンフェイズが配されており、さらにこのディスクは半球と南半球の月相を分けて表示する。誤差は577.5年にわずか1日のみという高精度も特筆すべき点だ。
ムーンフェイズ以外にも日、曜日、月、4桁の西暦表示などを有する多機能機だが、このすべての表示をリュウズひとつで完結できるという操作性が、ユーザーにとってはありがたい。
ムーンフェイズは神秘的で独自の魅力を持つ
ムーンフェイズは文字盤上で月の満ち欠けを示す複雑機構である。IWCはムーンフェイズの製造に定評があり、誤差を最小に抑えた「永久ムーンフェイズ」を作り上げている。
特にポートフィノは、ムーンフェイズ搭載機も人気が高いIWCコレクションだ。ムーンフェイズの歴史や仕組みを理解し、神秘的で独自の魅力を持つ時計を選んでみよう。